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大東市でスタートした≪時ノ祀リ≫ プロジェクト。〈展覧の部〉は連日大反響、〈演奏の部〉では、声と四重奏が奏でる驚異の音楽に満席の参加者が息をのんだ


≪時ノ祀リ≫は、作曲家・平野一郎氏と美術家・前田剛志氏の対等の協働による、音楽×美術の横断企画です。そのプロジェクトが大東市でスタート、5月26日(日)から6月2日(日)まで開催しました。

大東市立総合文化センター(サーティホール)の市民ギャラリーと多目的小ホールを臨時の祀りの庭=結界に見立て、キーワードは、〈しつらへ〉と〈おこなひ〉。

まずスタートした〈展覧の部〉では、照明を落とした市民ギャラリーの柱を中心に、『七十二候』の造形が円形に並べられ、市民ギャラリーが全く新しい姿を見せました。

柱を中心に円形に並べられた『七十二候』の造形


スタートは、〈二十四節気〉の『立春』の『七十二候』は「東風解氷」(はるかぜ こおりを とく)で始まります。これに「大」の字を加えると、まさに大東市でのスタートに重なります。


1つずつの造形は、自然観察や歳時記の参照にはじまり、暦の発祥に関わる稲作、それと共に興った祀りの起源、古代の葬送儀礼などから蒐集された題材を元に、それぞれの候に形が与えられ、色彩が施されています。


細部まで整えられ、彩色された『七十二候』の造形


開催記念トークイベントは、5月26日(日)14時から行われ、考古学者の笠井敏光氏の進行のもと、作曲家・平野一郎氏と美術家・前田剛志氏が≪時ノ祀リ≫の興味深いエピソードを披露されました。

開催記念トークイベント(右から、平野先生、前田先生、笠井先生)

〈演奏の部〉にご出演いただく女声独唱の吉川真澄氏が、この場の雰囲気に合わせた、歌唱だけではない、特殊発声やボディ・パーカッションを含む表現の可能性を演じてくださいました。

特殊発声やボディ・パーカッションを含む表現を行う吉川真澄氏

【時ノ祀リ】のクライマックス・特別な〈おこなひ〉となる6月1日(土)17時開演の〈演奏の部〉は、《四季》×《二十四氣》、無伴奏女声独唱と弦楽四重奏の競演です。 満席の参加者はかたずをのんで、色とりどりの風物が絵巻のように奏でられる、世界初演の弦楽四重奏曲《二十四氣》、刻々と巡る万象のただなかで、ひたむきに祈りを捧げる、人間の極限の歌、《四季の四部作》に聞き入りました。

刻々と流れる自然の巡りとその変転を体現する《二十四氣》、滔々たるその持続を時に烈しく時に静かに堰き止めて、春分には「春の歌」、夏至には「夏の歌」、秋分には「秋の歌」、冬至には「冬の歌」というふうに、文字通り祭祀そのもののように《四季の四部作》が差し挟まれました。人声と楽器の響きが強烈なコントラストを成しつつ、確かに響きあい照らし合い、二つの世界は次第に沁み込み融けあって、最後には圧倒的な高揚を成しました。演奏が進むに連れて、客席の集中と昂奮も熱を帯び、終演後はひときわ大きな拍手に包まれました。


休憩をはさんで2時間半に及ぶ長丁場でしたが、時に人間業をも超える驚異の女声・吉川真澄氏と、ZAZA quartetの4人の凄腕プレイヤー佐藤一紀(violin)・谷本華子(violin)・中田美穂(viola)・金子鈴太郎(cello)各氏の引き起こす化学反応に声もなく、摩訶不思議なのになぜだか懐かしい、唯一無二の音楽世界に浸りました。

終了後も、反響板と見事にマッチした柿渋和紙のタペストリーや竹と石を組み合わせた結界など舞台の<しつらへ>に見入り、四重奏や女声独唱の楽譜に感嘆の声を上げるお客様が続出するなど、昂奮の余韻が続きました。


舞台のしつらへ(リハーサル風景)


〈展覧の部〉もこの日は、21時30分まで延長され、終了間際までにぎわいました。そして最終日となる2日の日曜日も終日訪れる人が絶えませんでした。


〈演奏の部〉ご来場の皆さまのご感想から

  • 初めての音楽でした。違う世界へひきこまれていくようでした。(50代、女性)
  • 古代の祈りを感じ、四季の色を感じました。(60代、女性)
  • ひきこまれた。1/fゆらぎみたいなものが出ていていやされた。「理解せずに感じてください」という司会の方の言葉で楽しめました。(40代)
  • 夢中になって聴きました。のめりこみました。人間の体って、あんなふうに楽器になることができるんですね!
    人間の身体から出す音の多様性、可能性、すごいと思いました。こちらの心にも身体にも、しみこんでくるようです。(70代、女性)
  • 人間の発する声・音を聴くと、どんな楽器よりもすばらしい楽器と感じます。今日の演奏はそのことを特に感じられました。(50代、女性)
  • 歌と四重奏が、同じ平野氏の作品ということで、全体が一つのまとまりとして伝わってきました。四重奏は、二胡の演奏のようであったり、雅楽のようであったり、ボディパーカッションがあったり、肉声があったりで、平野ワールドをたっぷり楽しませていただきました。「冬の歌」の照明効果は大変よかったです。すばらしい演奏会でした。技術のすばらしさも見せていただき、感動です!(60代、女性)
  • 鳥肌が立ちっぱなしでした。(20代、男性)
  • 照明と「影」の共演も素敵でした。(40代、男性)
  • 「時ノ祀リ」、聴かせていただきました。最もシンプルな一言で表現させていただくと、素晴らしかったです!時空や生死の境界を少しずつ取り払ってゆき、やがて静かに、しかし確かに根源的なものに触れてゆく音楽に、深く打ち震えました。平野さんの曲を聴いていると、不思議と自分の過去のさまざまな記憶と、自分が体験したはずもない古の人間の記憶(とでも言いましょうか)が脈略なく蘇って来て、頭の中で渦巻きます。
    そして喜びと悲しみ、そして得も言われぬ恐怖に襲われます(特に「冬」)。吉川さんのパフォーマンスもまた圧巻でした。まさに「憑依」ですね。終演後は、放心状態でしばし動けず。良い体験をさせていただきました。(40代、男性)

作曲家 平野一郎氏からのメッセージ


だいとうのかぜ、こおりをとかせ!

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