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最終更新日 2022年1月27日
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あけましておめでとうございます。アステム広報担当のUTです。今年もアステムをどうぞよろしくお願いいたします。
すでに去年になってしまいましたが、Apple Watch Series7 を購入しました。以前、Apple Watch Series2 を使っていましたが、画面が割れてしまってそれきり使っていませんでしたので、実に5世代ぶりの使用です。
Series2 と比べて、画面が大きくなっていたりレスポンスが速くなっていたりもとても驚きましたが、今回一番驚いたのが、AssistiveTouch という新機能でした。
このAssistiveTouch、もともとは、上肢に障害のある方が AppleWatch を使いやすくなるように片手で操作をするための機能で、Apple Watch をつけた側の手のジェスチャーの組み合わせで操作ができるというもの。watchOS 8 から実装されたこの機能は、実はアクセシビリティの機能の中の一つで、最新の7だけでなく、Series6 やSE でも使用できるようです。
早速使えるように設定してみました。詳しい設定の仕方はアップルのサイトをごらんください。
https://support.apple.com/ja-jp/HT212760
Apple WatchのUIは、タッチ画面をメインに、Digital Crown(デジタルクラウン)と呼ばれる右側面にあるツマミとサイドボタンの2つの物理キーがあります。初代Apple Watchからこのインターフェイスは変わっていません。時計なのでその操作はもう片方の手を使う必要があり、たしかに上肢障害があった場合、Apple Watchの使用は困難になると思われます。
一方、eSIMが内蔵されて通信機能がついたり、大画面化や高速化が進むApple Watch単体でできることが以前と比べ随分増えました。できることは増えているのにUIは変わらず両手を必要とする。そんな状況では障害のある人たちと健常の人たちとの間にますます情報格差が生まれてしまう。そうAppleは考えたのかもしれません。
2016年11月、Appleは「アクセシビリティ」のウェブサイトを立ち上げました。サイト内では、前述のAssistiveTouchや、視覚や聴覚、身体、認知などさまざまな障害に向けた機能の説明がされています。興味深いのはSiriやAssistiveTouchのように健常者にとっても便利に日常的に使える機能が多いこと。障害のある人も健常者も同じ機能を便利に共有していることです。アクセシビリティを確保することで、障害のある人だけでなく、多くの人にとっても使いやすいものになるというコンセプトの存在が、アップルの製品が全世界であらゆる人たちに支持されている理由なのだと思います。
https://www.apple.com/jp/accessibility/
アクセシビリティ対策の身近なものとして、たとえば動画に字幕をつけることで、聴覚障害を持つ方が動画を楽しめるだけではなく、難聴の方も内容を理解しやすくなりますし、電車の中やレストランなど、音声が出せない環境でも動画視聴を楽しむことができます。
アメリカのウェブコンサルティング会社 Instapage社が動画の字幕の有無によるA/Bテストを実施したところ、字幕なしの動画は、再生回数や平均総視聴時間は5%程度、シェアやクリック率などは15%以上、字幕ありの動画よりもそれぞれ下回ったそうです。
https://instapage.com/blog/closed-captioning-mute-videos
字幕をつけることが、単にアクセシビリティ対策を行う以上のメリットがあることがわかります。
「字幕がついているのだから、手話はいらないんじゃない?」という声を時々SNSなどで見かけることがあります。実際自分も今の仕事に就く前はそう思っていました。手話は画面の約1/6の面積を占有します。テロップなどの幅が大きく制限されてしまいますし、字幕があるのでいらないのでは、と話したところ、めちゃくちゃ怒られました。
聴覚障害がある方にとって手話は言語であり、字幕を読むよりも格段にスムーズに情報として頭に入ってくるものです。「目で聴くテレビ」を視聴できるセットトップボックス「アイ・ドラゴン」の画面レイアウトは、聴覚障害者団体の方々と何度も話し合って、試行錯誤を繰り返し、障害当事者の方が一番みやすい、という声が最も多かったレイアウトを採用していますが、最新の「アイ・ドラゴン4」では、手話画面のサイズや字幕の文字サイズ、色なども、視聴者がみやすいようにカスタマイズできるようになっています。
またアステムには聴覚障害を持つスタッフも在籍しているため、全社会議では、手話と要約筆記による字幕を付与していますが、コロナ禍でオンライン開催となったここ数回の会議でも情報保障を付与し、よりわかりやすい画面となるようブラッシュアップを重ねています。
さまざまな方が来訪される公共施設を管理する部門では、障害者の方への接遇の研修を行い、すべてのスタッフが合理的配慮を行えるように、当事者の方の声を聞く機会を設けています。
「アクセシビリティ」が一方的な押し付けとならないよう、まずは何が求められているのかを知り、一つずつかたちにしてみる。今日のアップルの成功は、そうした一つひとつのトライアンドエラーによって築かれたものなのかもしれません。